民族

近代になってから民族は国家に取り込まれ 人々は国家の枠組みにはめ込まれていった 国家は国歌や国旗や物語や法律を作り 人々に忠誠心を求めた 戦争で敵の正義を信じるものはなく スポーツで敵を応援しようとする人はいない 連帯の感情で出来上がった国民は かきたてられた愛国心を疑ったりしない 連帯にはなんの根拠もなく 愛国心も郷土愛の延長にはない どの枠組みからもこぼれ落ちた人たちは 民族にも国家にも属することができず 流浪する民を演ずるしかなかったが 流浪の果ての無国籍の不自由は 時間と共に消えてゆき 気づけば自由人になっていた 国家にはめ込まれた人たちは 心から自由人を憐れんで 自由人の自由に気づくことはなかった